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医師は万が一に備えて加入しておくべき!医賠責保険

訴訟を起こされた医師はどうなる?

今、患者さんが診療を受けるとき、その病状と共に心配しているのは「医療事故」でしょう。医師の皆さんも日々の診療の中で、「この患者さん、あまり信頼してくれてないのかな?」と感じるようなことがあるかもしれません。しかし1999年の横浜市立大病院の患者取り違え事件以降も、度々重大な医療事故が発生し、その都度マスコミで大々的に報道されており、患者サイドの気持ちも理解できなくはありません。

では医療事故の件数がどうなっているのかと言うと、日本医療機能評価機構によると、医療事故の報告件数は、2008年に1,500件程度だったのに対し2014年には3,000件を超えています。これは「医療事故そのものの発生件数が増えている」というより、「医療事故に対する意識が高まり、故に報告件数が増えている」と考えられます。医師の方々にお話しを伺っても、以前に比べれば医療事故そのものは、様々な防止の仕組みの導入により減少傾向にあると感じておられる方が多いようです。

しかし残念ながら、その中で実際に訴訟となってしまっているケースは2003年頃から毎年コンスタントに1000件程度発生しているのです。この1つの理由としては近年の弁護士の増加が起因しているといわれています。近年急増した弁護士が収入源の1つとして「医療訴訟に力を入れている」と言われているからです。こういった背景も医師として知っておくべきでしょう。

では実際に「訴訟」となったしまった場合にはどのような責任が問われるのでしょうか。

当然ながら、世間からの非難は大変厳しいものがありますが、これはあくまでも「社会的責任」の追求であり、法的には「民事責任」、「刑事責任」、「行政責任」の3つの責任が問われることになります。

民事責任

民事上の損害賠償責任のことです。責任を果たすためには、必ずしも訴訟判決を経る必要はなく、当事者間で話し合いの場を持ち処理することもできます。

刑事責任

刑罰法規に規定されている犯罪を行ったため、刑罰を課せられる責任です。よく刑法211条1項前段で規定されている「業務上過失致死罪」が問題となりますが、医療過誤では、よほど悪質でない限り、刑事裁判になることはありません。また、そこまで発展したとしても、罰金刑か執行猶予が言い渡されるケースが今のところほとんどです。

行政責任

医療過誤の場合も同様に医師は行政責任が追及されることがあります。医師法では、①罰金以上の刑を課せられた場合、②医事に関して犯罪、不正行為があった場合、③医師の品位を損ねた場合、のいずれかに該当した場合、厚生労働大臣が「戒告」「3年以内の医業停止」「免許の取り消し」の処分を行なうことができる旨が規定されています。ただし、処分の一切を厚生労働大臣が独断で行えるということではなく、医師法では、諮問機関である「医道審議会」の意見を聴いてから、処分を行うこととしています。また、処分を受ける医療側には弁明の機会が与えられています。

なお、刑事責任に問われたからといって、必ずしも行政処分に該当するというわけではありません。逆に、刑事責任に問われなかったとしても、行政責任を問われたケースもあります。

ただ、ここで大きな問題に発展しやすいのは、民事責任から生じる損害賠償責任です。賠償が求められる損害の範囲は、債務者(医師や医療機関など)に過大な負担を課さないように、社会的に見て相当な因果関係の範囲内ある損害に限定されています。しかしながら最近の訴訟の中では、患者・家族の主張が認められ、支払いを命じられた賠償金が高額になるケースが発生しています。中には、医療機関の経営が揺らぎかねないような賠償金支払い命令も出されたりしているのです。その為、医療事故に手慣れた弁護士が担当する裁判では、こういったケースを想定し、患者・家族側が医療機関だけでなく担当医師にまでも損害賠償を請求する状況が増えているのです。

万が一に備えて入っておくべき、医賠責保険とは?

このような賠償責任が生じる事態に備え、医師や医療機関の多くが、万が一に備えて医賠責保険に入っています。大きくは次の3つに分類することができます。

医師賠償責任保険の種類

  • 日本医師会医師賠償責任保険
  • 病院賠償責任保険
  • 勤務医賠償責任保険

の3つです。

日本医師会医師賠償責任保険(以下 医賠責保険)

最も大きな医賠責保険である日本医師会医師賠償責任保険は、日本医師会によって運営されている保険です。同会の会員である開業医・勤務医・研修医が加入することができます(開業医は自動的に加入)。これは日本医師会会員が対象の保険で、医師が医療事故を起こし、患者に身体の障害が発生した場合、その賠償と紛争の解決を日本医師会、都道府県医師会、保険会社の3者がバックアップする制度です。

病院賠償責任保険

被保険者が病院や診療所の開設者(施設管理者)となる医賠責保険です。病院賠償責任保険は、病院や診療所での医療事故で、患者が亡くなった場合や後遺症が生じた場合に、損害賠償責任を負担することによって被る損害をカバーします。これは、医師の過失だけでなく、看護や介護の際の転落・転倒、または施設の不備等による負傷なども保障されます。

勤務医賠償責任保険

勤務医師が医療事故を起こし、患者に身体の障害が発生した場合の賠償などを補償する医賠責保険です。これは民間の損害保険会社と個別に契約をするものです。加入できるのは病院・診療所に勤務する医師のみです。なお、アルバイト等により勤務先の病院が複数ある場合でも、各々の病院における全ての医療業務が対象となります。また、加入者だけでなく、その指揮・監督下で起こった看護師、診療放射線技師、薬剤師による事故も保障されます。

ここで気をつけていただきたいのは勤務医の場合です。勤務医の中には「もし万が一の場合でも、勤務先の病院賠償責任保険があるから大丈夫」と考え、この勤務医賠償責任保険に加入していない方々が未だに多くいらっしゃいます。確かに、勤務医の過失は民法では「使用者責任」の規定から、事業主である医療機関側に賠償請求するのが一般的です。しかし、近年は前述したように、患者・家族側が少しでも損害賠償金を請求しようと、勤務医を共同被告として訴訟に加えるケースが急増しているのです。この実態を看過すべきではないでしょう。

医賠責保険の補償内容

では、どのような保障内容になっているのでしょうか。日本医師会が大手損保4社と契約している「日本医師会医師賠償責任保険」(以下 医賠責保険)は、同会の会員である開業医・勤務医・研修医が加入することができます(開業医は自動的に加入)。保険の対象は、医療行為の過失によって生じてしまった障害や死亡事例です。支払い限度は1事故1億円(保険期間中最大3億まで)ですが、100万円以下の事故は免責なので保険金は出ません。

支払われる保険金の種類は、損害賠償金(示談・和解でも対象)をはじめ、被害者の治療費、入院費、慰謝料、休業補償費等などがあります。また、保険会社からの事前承認が必要となりますが、訴訟になった場合の訴訟費用や弁護士報酬なども賄われます。一般的なタイプは最大補償額が1億円となっていますが、2億円までカバーされる最大保障タイプも登場しています。

これに対し「勤務医賠償責任保険」は研修医や勤務医が加入できる賠償責任保険であり、免責100万円、最高保険金額1億円という内容です。医師が医療事故を起こし、患者に身体の障害が発生した場合の賠償などを補償します。加入できるのは病院・診療所に勤務する医師のみです。なお、勤務先の病院が複数ある場合でも、各々の病院における全ての医療業務が対象となります。また、加入者だけでなく、その指揮・監督下で起こった看護師、診療放射線技師、薬剤師の事故もカバーされます。支払われる保険金の種類は、損害賠償金(示談・和解でも対象)をはじめ、被害者の治療費、入院費、慰謝料、休業補償費等などがあります。また、保険会社からの事前承認が必要となりますが、訴訟になった場合の訴訟費用や弁護士報酬なども賄われます。一般的なタイプは最大補償額が1億円となっていますが、こちらも2億円までカバーされる最大保障タイプも登場しています。

まとめ

このように医療機関そして医師にとって金銭的なリスクの回避が重要性を増してきています。医療行為は常に不確実性が伴うものですし、一瞬の判断が要求される最前線において、ミスを完全にゼロにすることは限りなく不可能に近いはずです。そのためには、まずこの勤務医賠償責任保険を活用すべきでしょう。

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大西宏明

・プロフィール

株式会社VIDA MIA代表取締役
生命保険・損害保険のコンサルティング、IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)として長期資産運用の提案、相続・事業承継対策として遺言の作成および民事信託(遺言代用信託)スキームの提案、と保険やオペレーティング・リース、投資信託など多岐に渡った金融商品を取扱い、専門家の税理士や弁護士とも提携してワンストップ型の独立系総合金融サービスを展開しています。

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・経歴

1972年生
滋賀県守山市出身

1991年
洛星高校 卒業

1996年
神戸大学 教育学部 卒業

1996年
大同生命保険相互会社 入社。企業年金部に配属後、大阪・京都で営業課長を歴任。

2015年
株式会社FPG 入社。大阪・広島で副支店長としてオペレーティング・リース(JOL)の販売に従事。

2016年
株式会社VIDA MIA 代表取締役就任