- 保険
- 2018-5-31
医師国保を知っておきましょう!
目次
医師国保の仕組みを御存知でしょうか?
御存知のとおり、日本は「国民皆保険制度」を採用しています。
その為医師も必ず公的医療保険制度に加入することとなります。
勤務医であれば、勤務先を通じて何らかの「保険」に加入しているはずですが、勤務した病院を退職し、自分で医院・クリニックを開設する際には別の「保険」に切り替えなくてはなりません。
その時、医師が加入できる健康保険に「医師国保」というものがあります。
この保険がどういうものか御存知でしょうか?
この保険のメリット・デメリットはどのようなものなのか、将来の開業を見据え、少し理解を深めておきましょう。
医師国民健康保険組合(医師国保)とはどのような保険か?
日本では「国民皆保険」制度により、原則全ての国民はなんらかの公的医療保険に加入しています。
この公的医療保険には大きく分けて、『健康保険』『共済組合』『国民健康保険』の3つがあり、これに75歳以上の方が加入する『後期高齢者医療制度』があります。
『健康保険』は主に民間企業に勤める人とその家族が加入します。
これは大企業単独または同業種の複数の会社が共同で設立した健康保険組合が運営する組合管掌健康保険と、中小企業等の従業員のために全国保険協会が運営する全国保険協会管掌健康保険(協会けんぽ)があります。
次に『共済組合』は公務員等とその家族が加入します。
これには国家公務員等共済組合、地方公務員等共済組合、私立学校教職員等共済組合などがあります。
そして3つめの『国民健康保険』はこのような健康保険や共済組合など、勤務先の医療保険に加入していない人が加入します。主に自営業者の方などが加入しています。
この「国民健康保険」の中でも、医師会に所属している医師のみが加入できる独自の保険制度が「医師国保」であり、正式には医師国民健康保険組合という名称で運営されています。
勤務医の場合には、勤務先で何らかの保険に加入していますが、勤務先を退職し個人で病院を開業した場合などには、別途保険に加入しなければなりません。このような時、住居地の市町村国保に加入するか、この医師国保へ加入するか選択できるようになっているのです。
医師国民健康保険組合とは
医師国民健康保険組合(以下 医師国保)は、従業員が5名未満の個人事業所を対象とした保険であり、個人病院やクリニックなどの小規模病院が加入できます。
個人事業の場合、従業員数が5人未満の事業所では社会保険の加入義務がないため、クリニックの多くは、事業者の保険料負担のない市町村国保か医師国保が選択できる仕組みになっています。
(ただし開業医でも、事業所を法人化している場合、もしくは従業員が5人以上いる場合は、社会保険である全国健康保険協会(協会けんぽ)等に加入しなければなりません。
また75歳以上の場合には、医師として働いている、あるいは経営に携わっていたとしても、医師国保としての資格を喪失するため、後期高齢者医療制度への加入が義務付けられています。)
ただ加入条件の1つとして、同一世帯での市町村国保と医師国保の混在が認められていないため、世帯全員で医師国保に加入するか、世帯分離をして本人のみ医師国保に加入するという手続きが必要になります。
またこの医師国保は、各都道府県の医師会が公法人として認めた組合が運営していますが、所属する医師会によっては組合が存在しない都道府県もあるので注意しましょう。
医師国保に加入するメリットとは?
医師国保に加入するメリットは、収入にかかわらず各組合員の保険料が決まっているため、市町村国保と比較すると保険料が割安になるケースが多いことです。
(注:必ずしも市町村国保より保険料が割安になるとは限りません!)
また前述のとおり、従業員数が5人未満の個人事業所などでは社会保険の加入義務がないため、医師国保(市町村国保も同様に)に加入すれば事業主の保険料負担がありませんので、事業主サイドから見ると経済的メリットがあります。
次に、医師国保には、医師本人だけでなく従業員や医師の家族も加入できます。医師国保も通常の健康保険等と同様に、医療費の一部負担制度や各種健診があり、高額療養費の一部払い戻しや出産一時金の支給もありますので、こういった点もメリットと言えるでしょう。
そしてもともと個人事業所であったクリニックが医師国保に加入していた場合、後に法人化したようなケースでもその加入資格を引き継げるため、新たに社会保険に加入する必要が無い、という点でも経営者から見れば大きなメリットです。
医師国保に加入することによるデメリット
そんな医師国保にもデメリットはあります。
良く言われることですが、自家診療の保険請求ができません。
また1人当たりの保険料が決まっているため、給与が少ない場合には収入に対する保険料負担が大きくなってしまうことも挙げられます。
同じように扶養家族の人数が増えれば、そのまま保険料が増加するため、扶養する家族が多いケースなどでは、負担割合が他の保険に比べて大きくなりがちになることなどです。
そして、世帯全員が医師保険に加入しなければならないため、同世帯に国保に加入している家族がいる場合には、すべて医師国保に変更する手続きを取らなければなりません。
まとめ
公的医療保険制度は、通常の生活の中ではまったく考えることない制度でしょう。
病院の勤務医の場合は、自動的に保険を指定されるためあまり問題となりませんが、医師が実際に開業をするときなどには注意すべきポイントです。勤務病院や経営スタイルにより、自動的に保険の種類が決まるため、あまり選択の余地がありませんが、いずれ開業を考えている医師は、この医師国保について知識を持っておくことが必要でしょう。
・プロフィール
株式会社VIDA MIA代表取締役
生命保険・損害保険のコンサルティング、IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)として長期資産運用の提案、相続・事業承継対策として遺言の作成および民事信託(遺言代用信託)スキームの提案、と保険やオペレーティング・リース、投資信託など多岐に渡った金融商品を取扱い、専門家の税理士や弁護士とも提携してワンストップ型の独立系総合金融サービスを展開しています。
経歴を見る
・経歴
1972年生
滋賀県守山市出身
1991年
洛星高校 卒業
1996年
神戸大学 教育学部 卒業
1996年
大同生命保険相互会社 入社。企業年金部に配属後、大阪・京都で営業課長を歴任。
2015年
株式会社FPG 入社。大阪・広島で副支店長としてオペレーティング・リース(JOL)の販売に従事。
2016年
株式会社VIDA MIA 代表取締役就任
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