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医師の年金と老後の資金形成を考える

そんなに安い?勤務医の年金受給額

老後の資金を考える上で「年金」は欠かせません。ここではまずは公的年金制度について概要を理解しておきましょう。

開業医と勤務医とでは加入する公的年金が異なりますので、その確認からさせていただきます。

開業医・勤務医ともに一階建ての「国民年金」に加入しています。平成29年度のひと月あたりの保険料は16,490円となっており、これは一律の設定になっています。なお、基礎年金の受給額については平成29年度の老齢基礎年金が月額約65,000円、年間合計で約78万円になります。開業医についての公的年金はここまでで終わりです。

加えて、勤務医には二階建ての「厚生年金」があります。

(二階建て年金は、以前は「共済年金」と「厚生年金」の2制度が併存していましたが、平成27年から「厚生年金」に一元化されています)

「厚生年金」は加入者の収入に比例するシステムで構築されています。したがって、その人の所得(報酬)により月々の保険料が異なり、また同時に受給できる年金額も異なってきます。ただし、「厚生年金」の保険料設定には上限があるため、現状ではどんなに収入の多い人でも、年金受給額はひと月あたり約250,000円強、年間合計約300万円強がほぼ上限だと言われています。

したがって、「国民年金」「厚生年金」の両方合わせても受給額の合計は年間最大約378万円と計算しておくと良いでしょう。ただし、これも20歳から65歳まで最高保険料を支払い続けた場合の概算額ですので、残念ながら殆どの方の実際の年金受給額は378万円を下回ります。

 

 勤務医と開業医の年金の違い

勤務医の場合、退職金にはあまり期待できませんが「国民年金」に加え「厚生年金」があります。

一方、開業医の場合、もちろん退職金はありませんので老後資金は自分で準備しなければなりません。しかも、公的年金は「国民年金」だけになります。

いずれにしても、公的年金の受給額は前述程度の金額に留まりますので、ご自身で何らの手も打たなければ、老後に向けた資金準備は万全な状態から程遠いものになるでしょう。

医師の皆さんも何らかの対策を検討しておられ、また、既にその対策を実行されている方も多いと思います。今は老後資産形成のための様々な手法が用意されています。是非ご自身の考えと計画に合った手法をご選択され、早めに準備していかれることをお勧めします。

 

医師のための年金制度「医師年金」とは?

老後に向けての代表的な年金と言えば、まず「医師年金」でしょう。「医師年金」は日本医師会が運営する“医師のための医師による年金制度”です。一般的な公的年金とは異なり、「医師年金」は「自分で積立てたお金を将来自分で受取る」という“私的年金”と呼ばれるものになります。

保険料は月額12,000円から希望の金額を設定でき、状況に応じていつでも増減が可能という特長があります。また、いわゆる“年金”に該当する「養老年金」は給付方法が限定されていないため、ご存命の限り年金を受取れるような設定(終身年金)も可能であり非常に融通の利く制度と言えるでしょう。ただし、その保険料が社会保険料控除・生命保険料控除等の所得控除の対象にならないことについては注意が必要です。

また、現在の「医師年金」は昔ほど有利な運用実績を残せていません。そもそも「医師年金」の運用は日本医師会が独自で行っているのではなく、実際は大手金融機関が医師会から委託を受けて運用しています。そのため、多くの金融機関が運用に苦慮している現在においては「医師年金」もその例外ではないのです。

 

開業医の資金形成のポイントは個人年金とiDeCo

私達が医師の老後資産形成に向けてお勧めしているのは、民間生命保険会社の「個人年金保険」と「iDeCo(イデコ)個人型確定拠出年金」です。

両者は「自分の将来のために自分で積立てをする」いわゆる“私的年金”と呼ばれるものです。

医師の中には単に「預貯金」だけで引退後の老後資金を準備しておられる方もいらっしゃいますが、老後資金を準備されるなら「節税効果」を存分に活用した上で長期的かつ効率的な資産運用を検討された方が断然有利と言えるでしょう。

まず、私達が老後資産形成のベースとしてお勧めするのが、民間生命保険会社の「個人年金保険」です。個人年金保険の保険料は、一定の要件を満たせば「一般の生命保険料控除」とは別枠の「個人年金保険料控除」の対象となり、これによって毎年積立てる個人年金保険料の1/2、所得税で年間最大4万円、住民税で最大2万8,000円の控除が受けられます。ただし、個人年金保険料控除の額はこれが上限となりますので、年間8万円以上の個人年金保険料を積立ててもそれ以上の節税効果は得られません。そのため、私達は各生命保険会社の規程に沿って(最低保険料を若干上回る程度の)月1万円、または年間12万円程度の保険料設定でのご契約をお勧めしています。

~ 他にも個人年金保険料控除の対象とはなりませんが(一般の生命保険料控除の対象になります)、外貨の方が円と比して金利が圧倒的に高いこと、将来の為替変動リスク(長期的な見地に立てば「日本円」の価値が相対的に下がるリスクがあります)等を鑑みて、老後資産形成のために外貨建保険のご加入を検討されるのも良いでしょう ~

次に私達がお勧めしているのがiDeCo(イデコ)です。

税務面で節税効果が高い制度は何といってもiDeCoでしょう。以前から「個人型401K」としてご加入されている医師もいらっしゃるかも知れませんが、今一度そのメリットを説明したいと思います。

iDeCoの節税効果が何故大きいかと言うと、積立・運用・受取の3段階でそれぞれ節税効果が得られることです。

積立時、掛金はその全額が所得控除を受けることができます。また、運用時には、通常株や投資信託などの金融商品から得た利益に対して現在20.315%で課税されるのに対し、iDeCoでの運用で得た利益は非課税になります。加えて、受取時に年金として受給すれば公的年金控除の対象に、一時金として受給すれば退職所得控除の対象となります。正に一石三鳥の税制優遇メリットが享受できる訳です。

ただし、そんなiDeCoにも注意すべき点があります。運用先は自分で指定するため運用リスクを自分自身で負うことになりますし、原則60歳まで積立金の引き出しが認められません。また、金融機関にてiDeCo口座を開設するための手数料負担が別途必要になってきます。

しかし、前述の注意点を踏まえても税制上のメリットの方が相当大きいため、iDeCoはドクターの「老後資金準備」という視点では極めて有効な制度と考えています。

 

以上のような理由から、私達はドクターの老後資産の運用の基礎として上記2制度の活用をまずお勧めしております。

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大西宏明

・プロフィール

株式会社VIDA MIA代表取締役
生命保険・損害保険のコンサルティング、IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)として長期資産運用の提案、相続・事業承継対策として遺言の作成および民事信託(遺言代用信託)スキームの提案、と保険やオペレーティング・リース、投資信託など多岐に渡った金融商品を取扱い、専門家の税理士や弁護士とも提携してワンストップ型の独立系総合金融サービスを展開しています。

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・経歴

1972年生
滋賀県守山市出身

1991年
洛星高校 卒業

1996年
神戸大学 教育学部 卒業

1996年
大同生命保険相互会社 入社。企業年金部に配属後、大阪・京都で営業課長を歴任。

2015年
株式会社FPG 入社。大阪・広島で副支店長としてオペレーティング・リース(JOL)の販売に従事。

2016年
株式会社VIDA MIA 代表取締役就任