- 老後
- 2017-9-23
医師の悲惨な老後破産の実態とは?
医師が生活保護を受給する現実
御存知の方も多いかもしれませんが、今から数年前『下流老人』という本がベストセラーになりました。この本の中で言うところの“下流老人”とは、「生活保護基準相当で暮らす高齢者およびその恐れがある高齢者」を意味しています。つまり『老後破産』の可能性の高い高齢者を指しているのです。
またこれに該当するかどうかを判断する指標として、以下の3つが挙げられています。
・(高齢期の)収入が著しく少ない
・十分な貯蓄がない
・周囲に頼れる人間がいない(社会的孤立) というポイントです。
皆さん「老後破産なんて医師には関係ない」と思われたことでしょう。
しかしながら現実に、医師が経済的に破綻してしまう事態が起こっているのです。
なぜそんなことが起きてしまうのでしょうか。
医師という高所得者がなぜ老後破産するのか
この本の中で筆者の藤田孝典氏は「老後破産にいちばん陥りやすいのは、現役時代に高所得者で比較的収入に恵まれていた世帯である」という主旨のことを述べられていました。そういった現役時代に収入が多かった富裕層を、一転して『老後破産』へと追い込んでいく原因として最も大きなものが「病気」と「介護」であることを藤田孝典氏は指摘しています。医師の場合にも同じようなことが起きているのです。
医師の中には「生涯現役」を掲げられ、ご高齢になられても診療を続けられる方々が大勢いらっしゃいます。そういった方々は当然ある程度の収入が継続するものと考えられ、故に将来に向けた貯蓄への関心が希薄になりがちです。一方で、以前にもお話しましたが、高所得者層に分類される医師は年齢を問わず生活費等の支出も多い傾向があります。ただし、当然ながらそれは支出に見合った収入があって初めて成り立つものです。
しかし何らかの原因で突然就業不能状態に陥り収入が途絶えた時、相応の蓄えが無ければ、その収支のバランスは一瞬で崩壊してしまいます。富裕層だった医師が就業不能となり収入が途絶えてしまうと、その生活は一体どうなるでしょうか。確かに「公的年金」等の社会保障制度もありますが、医師の収入に比べると遥かに見劣りする金額です。またこの場合、生活費への支出が多い家庭は、生活費への支出が少ない家庭よりも、より影響を受け易く、経済的に態勢を立て直すことがより難しくなってしまうのです。しかしこういったご家庭では、長年の裕福な暮らしへの「慣れ」と周囲に対する「見栄」からでしょうか、なかなか生活の水準を落とすことができず、その状態を引きずってしまいがちで、更にそれを周囲に相談することもできず、結果として最悪の「老後破産」へと至ってしまうのです。これが医師の老後破産の実態です。
【ここでは「老後破産」のみ取り上げていますが、若くしてこのような事態に陥ってしまう方も皆無ではありません。】
生活水準が高く貯金ができない医師の末路
医師は一般的には収入が「多い」と言えます。しかし貯蓄や貯金が多いかと言われると、必ずしもそうとは言えません。それは再三お話ししてきたように、「生活費」や「教育費」そして「遊興費」等への支出も多いからです。その結果、思うように貯蓄ができていない医師もいらっしゃるのです。驚くことに、中には多額の収入を得ながら、ほとんど貯蓄を持っていない医師も存在しています。
前述した「老後破産」などの事態を招かない為にも、まずは計画的に「貯蓄」をしておくことが肝心です。預貯金や各種積み立て、または老後に備えた「私的年金」でも良いと思います。浪費グセのある方は、老後まで取り崩しの出来ないような年金などでの積立がお勧めでしょう。また若くとも、万一、就業不能に陥ってしまった際には収入が途絶えるだけでなく、医療費などの自己負担が重くのしかかってくることになります。万万が一を想定し、若いうちから少しずつでも備えをしておくことが重要です。そしてその『クセ』を日頃からつけておきましょう。医師に限らず、これはとても大事なことです。
医師の老後は年金だけで生活できるか?
では、このような「老後破産」などが囁かれている現代社会の中で、老後は年金だけで生活できるのか…?
結論から申し上げてほぼ不可能でしょう。
今、老後の夫婦2人での平均的な生活費は月25万円と言われています。一方、平成29年度の厚生年金の標準的な受給額は月22万円(老齢基礎年金を含む)です。つまり一般的にも、既に年金だけでは生活できない時代に突入しているのです。医師の場合、大企業のサラリーマンのような「企業年金」もありませんので、年金に関しては上記とほぼ同じような金額になるでしょう。しかし生活水準は比較的高めであり、老後の生活費も25万円以上になることが予想されます。となると生活費が年金受給額を優に超えることが想定されます。またそもそも年金の受給金額は変動しますが、人口構成など様々な要素を勘案しても、将来的に年金の受給額が増える事は考えにくく、その実質的受給金額は下がる可能性のほうが高いと思われます。
以上のことから年金だけに頼った老後はほぼ不可能と言えるでしょう。
・プロフィール
株式会社VIDA MIA代表取締役
生命保険・損害保険のコンサルティング、IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)として長期資産運用の提案、相続・事業承継対策として遺言の作成および民事信託(遺言代用信託)スキームの提案、と保険やオペレーティング・リース、投資信託など多岐に渡った金融商品を取扱い、専門家の税理士や弁護士とも提携してワンストップ型の独立系総合金融サービスを展開しています。
経歴を見る
・経歴
1972年生
滋賀県守山市出身
1991年
洛星高校 卒業
1996年
神戸大学 教育学部 卒業
1996年
大同生命保険相互会社 入社。企業年金部に配属後、大阪・京都で営業課長を歴任。
2015年
株式会社FPG 入社。大阪・広島で副支店長としてオペレーティング・リース(JOL)の販売に従事。
2016年
株式会社VIDA MIA 代表取締役就任
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