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医師の資産保全に多大な影響を及ぼす金融緩和策とは?

コロナ禍なのに株価はバブル後最高値のなぜ?

昨年より世界に蔓延してしまったコロナによって、世界中で実体経済が痛めつけられています。

日本でも飲食業、観光業、輸送業をはじめそれらに関連する業界の落ち込みは激しく、目も当てられない惨状が続いています。

これは海外でも同じ状況です。日本よりも感染者を多く出している国々では、さらに強いロックダウンにも踏み切っており、より激しい経済の落ち込みが予想されます。

こうしたことはもはや言うまでもない話でしょう。

しかし一方で、株などを中心とした一部資産には資金が流れ込み、世界中で「バブル」とでも言うべき状態が発生しています。

なぜこんなことが起こるのでしょうか?

今の状況を不思議に思っている医師も多くいらっしゃるでしょう。

医師が「投資」をしていく上で、少なくとも知っておかないといけない事象があります。

今、足元で起きていることはまさにその1つでしょう。

今回はこの現象を理解する上で欠かせない『金融緩和』というものについて投資を行っている医師の方にご説明したいと思います。

資産を守りたい医師には経済の歴史は必修科目

経済の歴史

突然ですが、「なぜ、第二次世界大戦が起こってしまったのか?」と問われ、あなたはどう答えるでしょうか?

理由は様々あり、複雑に絡んでいることは承知していますが、その大きな要因が『世界恐慌』にあったことは紛れもない事実でしょう。

1929年10月にアメリカNY株式市場から起こった株式の大暴落から、世界は「世界恐慌」と呼ばれる未曾有の大恐慌に陥りました。

その結果、世界の大国は自国の経済を守る為、自国と植民地を軸とする「ブロック経済」と呼ばれる経済圏を作り、『保護貿易政策』を取りました。簡単に言うと他国との貿易取引を制限し、更には高関税を課すことにより、自国の産業を保護し、自国民と自国経済を守ろうとするものでした。

しかしこの結果、植民地を多く持たず、自国領だけでは経済が思うように回らないような国々は更に窮地に陥りました。そして他国への侵略を始めてしまったのです。

非常に大まかに説明するとこんな流れでしょう。

21世紀に入り、実は世界恐慌に匹敵するような世界規模での経済危機が訪れたことがあります。金融資産を持つ医師の方なら記憶に新しい事でしょう。それが2008年に起こったあの有名なリーマンショックでした。

リーマンショックの経験から学ぶボーダレス経済

私たちが2008年に経験したリーマンショックを思い出してください。

リーマンショックが起こってしまった理由は、当時サブプライムローンと呼ばれた金融商品が大きな原因でした。

名前にあるサブプライムとは、サブ・プライムつまりプライム(優良)の反対ということです。要は「不良」ということです。

当時欧米の金融機関は、本来なら融資の回収見込みが低い(=デフォルト(倒産)リスクが高い)このサブプライムローンを、あたかもプライム(優良)ローンのように取り扱い、金融工学を駆使して、それを他の様々な金融商品と混ぜ合わることにより、さらに複雑な金融商品に作り上げました。そうした非常に複雑な金融商品を米国・欧州の金融機関がこぞって大量に製造し、売買し、さらに保有しまくっていたのです。

が、当然ながら実際は「デフォルトリスク(=倒産リスク)が高く、回収見込みの低いローン」が基盤になっている商品です。一度そのデフォルトリスクが顕在化し始めると、導火線に火が付いたかのように世界中で連鎖爆発し始めました。それを元に作られていた金融商品のすべての信頼性が失われたのです。

ここで更なる事態が起こりました。上述したように、それらを元に組成されていた金融商品があまりに複雑過ぎ、広範囲に亘って保有されていたが為に、一体、誰が、どこで、どのくらいのデフォルトリスクを持っているかが把握できず、どの金融機関が危険なのかすら判断できないような状態となり、結果世界の金融市場はパニックに陥ったのでした。医師の皆さんの中にも資産が大きく目減りしてしまったという方もいるのはないでしょうか。

そして欧米の金融機関は、経済の『血』であるおカネの流れを止めてしまったため、世界の実体経済にまでも影響が及び、まさに世界恐慌の1歩手前にまで陥ったのでした。

しかし、結局1920年代の恐慌の時にように、世界は第二次世界大戦のような状況には陥りませんでした。世界経済はなんとか持ち堪え、今を迎えています。

では世界はどうやってこの状況を克服したのでしょうか???

その理由の1つが、第二次世界大戦時とは違い、世界各国の経済が密接に繋がっていたことが挙げられます。当時のように「自国さえ良ければ・・・」という状況ではありませんでした。世界各国で様々な業界が国境を越えて複雑に絡み合って経済が成り立っている昨今では「保護貿易」という方法を取るようなことはありませんでした。寧ろ世界各国が協調して対応に当たったことが挙げられます。

そしてもう1つ重要な答えが、今回のテーマである「金融緩和(政策)」と「財政出動」でした。

今回はこの「金融緩和」について資産保全や資産運用に関心が高い医師の方に向けてご説明します。

医師も無関係ではいられない金融緩和政策とは

金融緩和策

端的に言うと「金融緩和政策」とは

  • 「金利を低くしておくから、みんなおカネ借りてどんどん事業に使いなさい!」
  • 「お金を刷って市中に流すから、みんな安心してどんどんおカネを使いなさい!」(=量的緩和策)

というものです。

経済でもっとも恐ろしいことは「皆がおカネを使うことを怖がり、萎縮してしまうことです」こうなってしまうと、さらに経済は縮小し経済規模が小さくなってしまう。これが所謂デフレと呼ばれる最悪の状態です。

この「金融緩和政策」とは、そうならないよう、皆が安心しておカネを使えるようにし、人々に安心感を与えることで世界の経済を落ち込まないよう下支えするという効果があるのです。

事実、リーマンショックの際には、米国、中国、EU、日本、・・・と世界中の国々が金利とは呼べないような0(ゼロ)金利政策を実施し、天文学的な金額のおカネを刷って市場に供給し続けたのでした。(詳しい方法については今回は割愛します)

先ほどもお話したように、経済において「おカネ」はまさに血液です。世界経済に潤沢なおカネが流れるようになり、こうして世界は落ち着きを取り戻したのでした。

「金融緩和政策」にはこうしたメリットがあるのです。

 

しかし、一方では大きな障害も生み出します。

考えてみてください、本来なら必要ではなかったおカネが世界中に超低金利でジャブジャブと流れ込んでくるのです。

もともと足りていなかったワケではないところに、無理矢理に大量のおカネが流れ込み、ちょっとしたおカネの洪水のような状態になります。

カンの良い医師の方ならピンとくると思いますが、不足していなかったところにお金が流れこんできたら…これは当然「カネ余り」の状態を生んでしまうことになるのです。

 

特に、どういうところにおカネが流れやすいかと言うと、デフォルトリスク(=倒産リスク)の低いところです。当たり前ですね。あなたがもし倒産する可能性の高い人と低い人のどちらにおカネを貸すか?と尋ねられたら、勿論その可能性の低い人におカネを貸すでしょう。

つまりおカネのあるところには、余計におカネが集まりやすい構図が出来上がってしまいます。そしてそうしたおカネは『経済を下支えする』という本来の目的よりも 単に『投資・投機』という目的でも使われていってしまうのです。

こうしておカネは、株・仮想通貨・不動産…と言った資産により流れやすくなってしまうのです。

今、まさに世界中でこの現象が起こっているのです。

 

世界各国は「コロナで経済が落ち込まないように」と緩和策を取り、経済が底抜けしないよう対策を打っているのですが、そんな思惑とは裏腹に、おカネはおカネのあるところに流れます。今、信用度が高い(=おカネを持っている)ところにはタダ同然の低金利でじゃんじゃんおカネが流れ込んでいるのです。そしてそうした多額のおカネを手にした人や会社はどんどん投資・投機に資金を流し込む。そして世界の株式市場、仮想通貨市場などが空前の値上がりを生んでいるのです。

 

これが金融緩和策の不都合な一面です。

 

しかしこうした実体経済の成長を伴わない株高は続くとは思えません。

これは明らかに『バブル』です。バブルはいつまでも続きません。問題はいつこのバブルが弾けるか、ということでしょう。

金融緩和策が実施されて、当面はその効果で資産価格の上昇は見込めるかもしれませんが、逆に経済が落ち着きを取り戻しつつなると、どうでしょうか。

当然ながら「もう金融緩和策は止めよう」という話になりますね。

こうなると資産価格のバブル状態は一期に終焉を迎えます。

よく言われるのが、緩和政策の終焉を示すシグナルとして「長期金利の上昇」が挙げられます。

(前述した金融緩和策の①「金利を低くして~」という必要性がなくなってきたシグナルの1つとして見られます。)

このような資産価格の上昇は「金融緩和策」によって下駄をはいているだけですから、下駄が外れれば…元に戻るだけです。元に戻るだけなら良いのですが、逆に反動で大きく下がることも容易に予想されます。

 

今、マーケットはそんな「疑心暗鬼」を抱えながら動いている状況でしょう。

いつそうした“緩和終了”のシグナルが出てくるのか…、そしてその時に今進行中のこのゲームで最後に誰がJOKERを持っていることになるのか…

そんな感じではないでしょうか。

ですので足元の株高を素直には喜べない状況があるのです。

 

こうした状況をどう捉えるかは意見の分かれるところです。

金融緩和は、こうした資産バブルを生みだしてしまう一方で、崩れる経済を支えるという点では非常に重要な施策です。これには功罪両方の側面があるということを知っておかねばなりません。

医師のみなさん、資産保全は万全でしょうか?

リーマンショックから世界各国は「金融緩和策」という、こうした“禁断の手法”を安易に使うようになってしまいました。

それは前述したように世界の経済が繋がってリンクし、相互に依存してしまっているからです。今や経済の落ち込みは、もはや1国の問題ではなく、世界全体の問題になってしまっているのです。そしてその世界経済が落ち込む時には世界全体で金融緩和を実施しないと食い止められない・・・もう第二次大戦の時とは全く違う経済構造になっているのです。

 

経済も不動産相場も常に右肩上がりでは進みません。

いずれ大きく落ち込む時も来るでしょう。

そしてまた同じことを繰り返す可能性は多分にあります。

その時はまたこうした緩和政策ことが繰り返されることが容易に想像できます。

 

ただ各国が「金融緩和をするだけの余力が無くなったとき」はどうなるのか・・・

その時世界の経済はどうなるのか・・・

その時が資本主義の限界かもしれません。

 

いずれにせよ、医師の皆さんが投資をし、自分の金融資産を保全して行く上で、こうした事実を必ず知っておかねばならないでしょう。なぜなら、これが世界の実体経済を大きく左右する施策であるとともに、投資先の資産価格に大きく影響してくるからです。

 

今回は医師の皆さんにも是非知っておいて欲しい「金融緩和策」についてご紹介しました。

是非覚えておいていただけると幸いです。

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中谷日輝矢
三木正孝

・プロフィール

株式会社レイ・クルーズ 海外事業部長
出身地 : 兵庫県
卒業高校 : 淳心学院高等学校
卒業大学 : 慶應義塾大学商学部

―職歴・強み―
大同生命保険相互会社、住友信託銀行、シティバンクなど大手金融機関で実務経験を積み、海外信託、オフショアファンド、プライベートバンクなどを活用した資産形成と資産保全、資産承継(お子様へ、そしてお孫さんへ)のスキーム構築に強みを持つ。

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