- 節税
- 2019-9-30
医師がマイホーム購入で住宅ローンを組む場合の注意点は?
近年、住宅ローンが低金利の状態でありマイホームの購入を検討されている医師の方も多いのではないでしょうか。夫婦共働き世帯、専業主婦世帯、シングル、2世帯同居など家族構成は様々ですが、医師が住宅ローンを組む際に注意すべき点、新築のマイホーム購入後の住宅ローン控除について説明していきたいと思います。
住宅ローンの審査とは?
住宅ローンの審査には「事前審査(仮審査)」と「本審査」があります。
「事前審査(仮審査)」は、申込者である医師の方の年収・借入金額・完済時の年齢・勤務先など、申込者の収入や資産状況から借入返済が可能かどうかを審査します。
「本審査」は、事前審査の申告内容に誤りがないかどうか、信用保証会社や保険会社による購入希望物件の担保評価額や申込者の健康状態なども審査します。
医師の方の場合、住宅ローンの審査に落ちることは少ないと思いますが、以下の場合などは審査が不利になることがあるため注意が必要です。
・住宅ローンを組む前3年以内に転職や開業をしている場合
・車やバイクなど、既存のローンが多くある場合
・告知義務対象となる健康状態であった場合
・過去5年以内にローンなどの滞納をしたことがある場合
ネット銀行などの住宅ローンは気軽に事前審査(仮審査)が行えますが、年収・借入金額・現在の勤務先での勤続年数など数字だけの定量審査となり、転職直後や非常勤勤務が主体の医師の中には住宅ローンの審査に落ちたという人もいるようです。
仮に審査に落ちた場合には、別の銀行などの金融機関に住宅ローンの申請をすれば審査が通る場合もあります。
それでも審査が通らない場合は、ご自身で信用情報を取り寄せるなど原因を追求し、原因に応じた対応をしていく必要がありますのでご注意下さい。
安全に返済しやすい住宅ローンの目安は?
年間の返済金額が年間手取り金額の20%以内であることが理想です。
一般的に、銀行などの金融機関で住宅ローンを組む場合、年収の8倍程度の借入が可能と言われております。
しかし、ここで注意すべき点は「年収の8倍以内」とは銀行が貸してくれる金額であり、安全に返済できる金額ではないという点です。
例えば、年収1,000万円の方の場合、一般的に手取り金額は720万円程度のため、 720万円×20%=144万円以内が金利を含んだ年間返済金額の理想となります。(手取り金額は扶養親族の数など医師の方に応じて金額は変動します。)
また、夫婦共働きなのかどうか、子育て世帯なのかどうか、子供を将来医学部に進学させたいのかどうかなど、医師の方々の収入や出費に応じても住宅ローンの安全な返済金額は変動します。
近年は、低金利のため住宅ローンの金利は低く抑えられておりますが、都心部を中心に住宅の価額が高騰しており、手取り金額に対して高額な住宅ローンを組まれる方も多い傾向にあります。
将来の不測の事態に備えるためにも一定の貯蓄をしていく必要がありますので、ライフプランのシミュレーションを行い、経済的にある程度余裕をもって住宅ローンを組むようにしましょう。不動産(マイホーム)はいざという時に簡単には現金化できないので、住宅ローンの返済と並行して堅実に貯蓄や投資も行って、流動性の高い資産の構築も心掛けていくようにしましょう。
住宅ローン控除の適用を受けるには?
住宅ローン控除とは
住宅ローンを組んでマイホームを新築、取得、増改築等を行った場合、10年間にわたり所得税の控除を受けることができる制度です。なお、2019年度税制改正により、消費税率10%への引き上げ後の一定期間内に購入および居住した場合は、控除期間が13年間となります。
控除額の計算方法
住宅ローンの年末残高等×控除率
居住開始時期 | 平成26年4月~令和3年12月 | |
右記以外の期間 | 令和元年10月~ 令和2年12月※3 |
|
控除期間 | 10年 | 13年 |
控除率 | 1% | 1% |
年間の 控除限度額 |
特定取得※1:40万円※2 上記以外:20万円※2 |
1~10年目 特定取得※1:40万円※2 上記以外:20万円※2 |
11~13年目 以下のいずれか少ない方の金額 ・住宅ローン残高又は住宅の取得対価※4のうち、いずれか少ない方の金額の1% ・建物の購入価格※4×2%÷3年 |
※1 特定取得とは、住宅取得等に係る対価の額又は費用の額が消費税率8%又は10%により課税されている場合をいいます。消費税率が5%の場合や、個人間売買により消費税が課されていない場合は、「上記以外」に該当します。
※2 新築の長期優良住宅、低炭素住宅については、特定取得の場合50万円、上記以外の場合30万円が上限となります。
※3 購入した住宅の消費税率が10%の場合に限ります。
※4 建物の取得対価の上限は、長期優良住宅等以外の場合は4,000万円、長期優良住宅等の場合は5,000万円となります。
なお、住宅ローンの適用を受けたものの、その年分の所得税から引ききれなかった控除額がある場合には、一定金額を限度として、翌年度の住民税から控除をすることが可能です。
住宅ローン控除の主な適用要件
住宅ローン控除の適用を受けるためには、一定の要件を満たしている必要があります。
新築でマイホームを購入した場合に満たすべき主な要件は以下となります。
・新築又は取得の日から6ヶ月以内に居住の用に供していること
・償還期限が10年以上の住宅ローン等であること
・家屋の床面積が50㎡以上であること(上限なし)
・配偶者や生計を一にする親族などから取得等した家屋ではないこと
なお、控除期間中に合計所得金額が3,000万円を超えた年分については、住宅ローン控除の適用を受けることが出来ません。開業されている医師の方など、所得が多い方は毎年の合計所得金額に注意をする必要があります。
また、住宅ローン控除の適用を受ける場合、居住した年分の確定申告書を提出することが必要です。2年目以降については、勤務医の医師の方については勤務先の年末調整にて控除してもらうことが可能ですが、1年目は確定申告が必要となりますので忘れずに申告するようにしましょう。
マイホームの購入は人生で最も大きな買い物ではないでしょうか。それだけに家探しから住宅ローンの申請・返済など多くの時間と労力が必要となります。しっかりとライフプランのシミュレーションを行い、無理のない返済計画を立てるように注意しましょう。
三角 拓也
・プロフィール
三角会計事務所 所属税理士(近畿税理士会 住吉支部所属)
中小企業や個人事業の経営・会計・税務相談をメイン業務とし、相続・事業承継対策にも対応。
経歴を見る
・経歴
昭和58年6月生まれ 大阪府出身
大阪星光学院高等学校卒業(野球部所属)
京都大学 工学部電気電子工学科卒業
日本生命相互保険会社に勤務の後、税理士業界に転職
平成24年 税理士試験合格(簿記論、財務諸表論、法人税法、消費税法、相続税法)
平成27年 税理士登録
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