- 節税
- 2019-10-29
勤務医がプライベートカンパニーを持つメリットとは?
近年、節税対策としてプライベートカンパニー(マイクロカンパニー)を設立する勤務医が増えていると聞いたことはないでしょうか。プライベートカンパニーとはそもそも何なのか、メリット・デメリット、運用方法について説明していきます。
目次
1.プライベートカンパニー(マイクロカンパニー)とは?
プライベートカンパニーとは、オーナーやその家族など、少数の特定株主によって所有されている会社のことを言います。つまり、勤務医が一人もしくは家族と一緒に会社設立を行った場合、その会社はプライベートカンパニーということになります。
また、医療法人を営む開業医が家族所有のMS法人(メディカルサービス法人)を設立した場合も、そのMS法人はプライベートカンパニーということになります。
2.プライベートカンパニーのメリット
勤務医がプライベートカンパニーを設立するメリットは、主に以下の点です。
①所得税の節税が可能
勤務医として働いている医師の方で、勤務先からの給与収入以外に収入を得ているケースは多いのではないでしょうか。
これらのすべての収入を個人のものとしている場合、個人の課税所得が高くなり、所得税率も高くなってしまいます。
具体的な所得税率ですが、以下のようになります。
課税される所得金額 | 所得税率※1 | 住民税率※2 | 合計税率 |
695万円超 900万円以下 | 23% | 10% | 33% |
900万円超 1,800万円以下 | 33% | 10% | 43% |
1,800万円超 4,000万円以下 | 40% | 10% | 50% |
4,000万円超 | 45% | 10% | 55% |
※1 復興特別所得税は考慮しておりません。
※2 住民税率は所得に関係なく10%。
これに対し、中小企業者の法人実行税率ですが、以下のようになります。
課税される所得金額 | 実行税率※3 |
400万円以下 | 21.42% |
400万円超 800万円以下 | 23.20% |
800万円超 | 33.59% |
※3 地方税は標準税率により計算、均等割額は計算に含めておりません。
上記税率を比較した場合、個人の課税所得が一定ラインを超えると法人税等の税率の方が低くなります。従って、プライベートカンパニーを設立した場合、会社と個人で所得を分散できるため、所得税と法人税等の全体で見た税負担が少なくなり、節税をすることが可能となります。
②経費の計上が可能
プライベートカンパニーの事業に関連する支出については、経費として計上することが可能です。
例えば、事業に使うパソコンや備品、携帯代、事業関係者との飲食代などが挙げられます。
また、家族に事務作業などの仕事をしてもらうことにより給料を支払うことも可能です。(ただし、配偶者控除の対象者や社会保険の被扶養者の場合は支給額に注意が必要。)
結果、経費を計上することにより法人税等の負担が少なくなり、節税をすることが可能となります。
③相続税対策が可能
不動産や株式などの資産をプライベートカンパニーの所有にしておけば、相続財産がプライベートカンパニーの株式となるため、相続税の評価を引き下げることが可能です。
3.プライベートカンパニーのデメリット
プライベートカンパニーを設立した場合、メリットばかりではなく以下のようなデメリットも生じます。
①会社設立にコストがかかる
会社設立をする場合、定款作成やその認証、登記などの費用が必要となります。
費用は法人形態により異なり、株式会社では約25万円~30万円、合同会社では約10万円~15万円かかります。
また、プライベートカンパニーを資産管理会社として運用するために不動産をプライベートカンパニーに移転する場合、名義変更に係る登記費用や不動産取得税などの費用が発生します。
②会社運用にコストがかかる
自宅以外を事務所にする場合、新たに家賃や光熱費などのランニングコストが発生します。もちろん自宅を事務所にすればいいと考える医師の方もいると思いますが、賃貸住宅に住んでいる場合など、契約によっては法人の本店所在地として登記できないケースもあるため事前に契約内容を確認するようにしましょう。
また、会社を運営する場合、確定申告および納税をしていく必要があります。従って、確定申告を税理士に依頼する場合は税理士費用(数十万円)がかかります。
さらに、法人は個人と違い、赤字であっても地方税の均等割(約7万円)を支払う必要があります。
このように、会社設立をする場合、設立および運営にコストがかかりますので、節税可能な金額とコストアップする金額、運営の手間を比較検討するようにしましょう。
勤務医の場合、勤務先からもらっている給与が高額であるため、所得税率の高い方が多いと思います。従って、給与以外の収入をプライベートカンパニーに移すことが出来れば、所得分散を図ることにより節税をすることが可能となります。
ただし、単純に医療機関からの給料をプライペートカンパニーに付け替えたり、闇雲に経費を計上したりすると税務調査で否認される可能性があります。プライベートカンパニーを設立して節税を図りたい場合は、事前に税理士などの専門家に相談することをお勧めします。
三角 拓也
・プロフィール
三角会計事務所 所属税理士(近畿税理士会 住吉支部所属)
中小企業や個人事業の経営・会計・税務相談をメイン業務とし、相続・事業承継対策にも対応。
経歴を見る
・経歴
昭和58年6月生まれ 大阪府出身
大阪星光学院高等学校卒業(野球部所属)
京都大学 工学部電気電子工学科卒業
日本生命相互保険会社に勤務の後、税理士業界に転職
平成24年 税理士試験合格(簿記論、財務諸表論、法人税法、消費税法、相続税法)
平成27年 税理士登録
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