1. /
  2. /
  3. 医師という職業に本当に将来性はあるのか?
  • 転職

医師という職業に本当に将来性はあるのか?

医師という仕事は将来飽和状態になるのか

2016年3月、厚生労働省が2040年には全国で医師が3万4,000人ほど過剰になるとの推計結果を発表しました。この推計における「必要な医師数」は、高齢化による将来の患者数や入院ベッドの数などから算出したそうです。医師供給数は、医学部定員が16年度(推定9,262人)のまま横ばいで続くと仮定した上で、育児中の女性医師や高齢医師の労働力減少も考慮して推計されています。今、医師不足が深刻な問題として取り上げられていますが、将来的には飽和状態になり、医師の余剰が出るだろうと推測されているのです。この推測から政府は現在増員を認めている医学部の定員について、削減を含めた検討に入るとしています。

実際に起こっている事としては、都会の診療所(クリニック、医院)の飽和傾向です。歯科医院と同じように街のいくつものビルに、診療所が入っているのを見かけす。歯科医院同様に患者の奪い合いが生じ、都会では集客(集患)できなかった診療所(医院、クリニック)や病院は、撤退・廃業せざるを得なくなる事も珍しくないのが現状です。医療機関の廃業事例は私が実際に見聞きするものだけでも枚挙に暇がありません。

 

20年後は医師不足?医師過剰?

上述したように厚生労働省は、このままでいくと2040年には医師が過剰になると推計しています。しかし医師不足が深刻な問題とされている現在、本当に医師数は過剰になるのでしょうか。

医師過剰になると予測される理由の1つとしては、将来の我が国の人口減少が挙げられます。国勢調査によると、日本の人口は2040年代には毎年100万人のペースで減少していくと言われています。人口が毎年100万人ずつ減少するのに現在の医学部の定員数をそのまま横ばいで維持すれば医師数が過剰になってしまうという政府の推測も理解できます。

現役医師の方は、医師全体が過剰 or 不足になるというよりは、都市部は過剰で地方は不足状態、診療科による偏在は将来も変わらないと考えている方が多いと思います。実際に、地方で勤務をする医師は「医療資源の少なさ」、「子供の教育の問題」などの理由から都市部への転居を伴う転職を志向する方が多く、医師が地方から流出する傾向があります。その為、将来的にも地方や医師不足の診療科は医療資源としての医師数(勤務医数)は当面満足のいく状態にはならないだろうと考える人が多い事と思います。

このままの医療政策、医師養成が続くと、将来的に医師が全体的に過剰になる、或いは逆に医師不足は続くといった両極端の議論よりも、都市部は過剰で、地方は医師不足、産婦人科医師や小児科医師、救命救急、外科医などは不足したまま、診療科による偏在傾向が続くという言い方の方が的確かもしれません。

 

人工知能の普及で医師の年収が下がる?

アメリカIBMの「ワトソン」をご存知の医師は多いでしょう。

このワトソンとは、IBMが開発した人工知能の事です。IBM Watsonでは「AI」を「Artificial Intelligence(人工知能)」ではなく、「Augmented Intelligence (拡張知能)」として人間の知識を拡張し増強するものと定義しています。

人間と同じように自然な言葉をそのまま理解し、さまざまな分野の専門知識を学習して自分の知識として蓄える認知型コンピューターと位置付けている訳です。

この人工知能は様々な業務を人に代わって(人の役割を補完して)、こなしていくだろうと予想されています。例を挙げると、日本では既にメガバンクでの導入が進められており、複雑な業務の大幅な効率化を期待されています。

このIBMのワトソンは医療現場においても、例えば、ワトソンによる診断の正答率は、人間の医師を上回ったという結果が出ているそうです。 現場でも活躍する未来はそう遠くないかもしれません。

医師という職業の専門的かつ膨大な知識と経験が必要な業務も教科書通りの回答であれば人工知能にとって代わられ、人工知能の判断を基に診断を下して治療方針を決定するといった事になるかもしれません。モンスターペイシェントの対応はワトソンにお任せなんてプラス面があれば良いのですが・・・。ロボットが定型的なプライマリケアの診療を担うと患者さんとのコミュニケーションにおける感情的なトラブルは減少し、医師のストレスも少しは緩和されるかもしれません。しかし、一方で、医師の希少性や特権的な地位は相対的に低くなってしまいます。生身の人間である医師にしかできない業務だけが残り、定型的な診断や単純業務は人工知能に置き換えられてしまうかもしれない近未来予測です。ワトソンが医療の臨床現場で採用されるかどうかは兎も角として、厚生労働省が推計するように、都市部では将来的には医師が飽和状態になり、医師が余剰となる事も考えられます。

以上の事や日本の健康保険財源不足を踏まえると、地方や産婦人科、小児科、救命救急、外科などの医師不足とされている場所や診療科以外は、将来、医師の年収が下がっていく事も考えられるのです。

 

将来に備えて医師としてしっかり稼ぐために転職を考える

人工知能の存在や将来的な医師数の問題など様々な視点から、将来も医師として長く働いていたい方こそ、今のうちから自分のキャリアプランや現在の職場が将来にわたって安定した勤務場所となり得るのかどうかを一度チェックしてみてください。

一昔前であれば大学医局から離れ、医師が自分で職場を選ぶという事は、一般的には開業する医師にしか考えられなかった事です。医師の人材流動化が進む現在はそのような事はなく、医局に属さず自分のライフスタイルに合わせた職場選択を望む医師が増えてきています。しかし医局を離れて転職する際は、様々な視点から医師の転職市場や医局との円満な距離感を冷静に見る判断力が必要です。「医局を離れて転職してみたものの、思ったような職場に出会えなかった。」というような事態にならないためにも、医師転職市場の状況や医師の需給バランス、診療分野の将来性、医療法人や病院、クリニックなど職場の経営理念、経営状況・財務内容などを意識して時間をかけて検討する事が肝要です。

The following two tabs change content below.
三木正孝

・プロフィール

医師の転職支援サービス「医師転職コンシェルジュ」を運営し、自らもエージェントとして医師の転職をサポートしています。これまでに14年間、多くの医師の転職を成功に導きました。

経歴を見る  

この専門家へのお問い合わせはこちら

・経歴

1969年大阪生まれ
大阪明星学園・明星高等学校卒業(高校3年時・剣道3段、玉竜旗全国高等学校剣道大会出場)
関西大学 法学部法律学科卒業(専攻・民法総則=高森ゼミ第14期幹事、大学4年時・剣道4段)

1992年
総合商社 ニチメン(現・双日株式会社)入社。商社マンとして11年間(1992-2003年)勤務

2003年
NZ・Hawaii短期留学・ビジネス視察

2004年
株式会社レイ・クルーズ設立、代表取締役に就任。
大前研一塾長ABS(アタッカーズビジネススクール)第19期
~現在に至る。