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フリーランス医師?医師の非常勤(アルバイト)と取り得る節税対策

フリーで仕事をする医師が増加しています。
と言っても、その形は色々です。フリーランスで働く医師は非常勤医師、バイト医師を指す事が多いですが、非常勤求人を複数組み合わせて医師が働く事にはどんなメリットとデメリットがあるのでしょうか?

非常勤医師=フリーランス医師?

医師にとって非常勤勤務(アルバイト)をする事はずっと昔から当たり前で、多くの医療現場では非常勤医師の存在なくしては、とても回っていかないのが実情です。恒常的に非常勤医師の求人は存在しています。
常勤先を持つ医師にとっては、外勤先でバイトをしていても自分には「常勤先」という確たる拠り所がある為、自分が「フリーランス」という一面も併せ持っているという意識はあまり無いと思います。

しかし、広義では非常勤=フリーランスと言えなくも無い訳です。
(一般の企業では副業禁止がまだまだ一般的です。しかし、医師の世界では兼業は珍しくも何ともない。)
時間と労力を掛けてせっせと当直などバイトをしてトータル年収を増やしたとしても、うまく立ち回らないと、確定申告の結果、多額の税金を追加納税しなければならなかったり、追徴課税されるという経験をした事がある医師も少なくないのではないでしょうか。

一方で、顧問税理士を雇い、しっかりと税務対策、節税対策をしている医師もいます。

非常勤勤務(バイト)をしている勤務医の場合、大別すると以下のような勤務形態のどれかに当てはまる医師が多いかと思います。

1)医局に属して、大学病院や関連病院を主たる勤務先(常勤先)にし、医局の斡旋でバイトをしたり、医師転職エージェントのウェブサイトに登録して医師求人案件の紹介を受けて外勤(バイト=定期非常勤やスポット)をフリーで行う。

2)医局には属さず、フリーで常勤先病院に就職し、外勤(バイト=定期非常勤やスポット)をフリーで行う医師。

3)医局にも特定の病院にも属さず(常勤先を持たず)、定期非常勤やスポット勤務を複数掛け持ちする医師。

常勤勤務をしながら、いわゆるアルバイト(定期非常勤やスポット)をする医師は多いですが、大学医局にも属さず、常勤先の病院も無く、という全くの「フリーランス医師」が一昔前よりも確実に増えています。

特にこのフリーランス医師として活動する医師が多い診療科の筆頭は「麻酔科」です。複数名の麻酔科医がチームを組み(企業形態にしているケースも)、複数の病院と個別に契約を結んで、手術麻酔を担うといったものです。

契約形態は様々ですが、月額固定金額+麻酔点数の何割といったものがあるようです。

麻酔科医の他には「産婦人科医」や「整形外科医」の間でも同様の試みがあるようですが、まだ一般的とはまでは言えない状況です。

年収2,000万円超の医師は?

さて、バイトをして年収が増えると年収が2,000万円を超えるという医師は多くいる事でしょう。2,000万円超えや2ヵ所以上から給与をもらっている人は確定申告が必要です。

非常勤医師として働くと、非常勤勤務先(バイト先)から年末に源泉徴収票が送られてきます。年末調整は主たる給与(常勤先からの給与)についてしか行われないので、自分で確定申告をする必要があります。確定申告で税金が還付される場合もあれば、追加で納税しなくてはならない場合もあります。

2ヵ所以上から給料をもらっている場合、そのうちのひとつを「主たる給与」とし、残りは「従たる給与」としなければなりません。

「主たる給与」は常勤先からもらう給料です。最も勤務時間が長く支給額も多い病院からの給料が「主たる給与」というのが一般的です(「扶養控除等申告書」を提出している勤務先病院の給与が「主たる給与」です)。

「主たる給与」(常勤先)と「従たる給与」(バイト先)では給与に掛かる税金の金額が大きく異なります。「主たる給与」の毎月の源泉徴収は源泉徴収税額表の「甲欄」で、「従たる給与」は「乙欄」で処理されます。

繰り返しになりますが、年末調整は常勤先でしか行われないので、常勤先からもらう給与の税金「甲欄」と、非常勤先からもらう給与の税金「乙欄」を合算して、他の所得(不動産所得など)があれば、それらも合算して確定申告で税額調整を行います。

税金の納め過ぎがあれば還付され、不足があれば追加で納税する必要が生じる訳です。

所得税や社会保険料(厚生年金、健康保険)、それに住民税・・・、
高いですよね。そう感じる医師は多いと思います。

医師が取り得る節税手段とは?

バイト(フリーランス)で一生懸命稼いでも、身を粉にして当直を入れまくって年収アップを実現しても、天引きされる金額の多さに辟易するという話しを医師からよく聞きます。しかし、勤務医には残念ながら節税手段は殆どありません。

フリーランス医師が増えているのは、女性医師の増加(出産、育児、ライフスタイルの変化、様々な価値観・・・)や、若手医師を中心とした仕事観や価値観の変化などの他、金銭的要因も(手取り、可処分所得の増加を目指して)複合的に絡み合っての時代の流れという印象があります。

さて、このフリーランス医師ですが、病院と雇用契約書を取り交わし、労働対価を「給与」として受け取るならば節税手段は殆どありません。これは勤務医と同様です(身分はあくまで非常勤医師という勤務医である訳ですから)。

フリーランス医師には「不安定な身分」、「社会的信用が相対的に低い」といったデメリットがあります。

メリットは「自由裁量」、「年収大幅アップの可能性」、「時間的余裕」、「主治医にならないなど責任があまり伴わない」といったものが挙げられるかと思います。

医師としての使命感とか、どっちが立派だとか、善悪といった物差しはここでは置いておきます。

やむなくフリーランス医師をしている人は別として、デメリットを上回る大きなメリットが無いと、フルタイムで働く事ができる医師がフリーランス医師を目指す必然性も必要性もあまり無いでしょう。

経済合理性を追求してフリーランス医師になる場合は、労働対価を「給与」ではなく、「報酬」として受け取る事が現状では得策だという考え方があります。

このフリーランス(個人事業主)として働くという形態は医師の世界ではまだあまり一般的ではない為、税務上ややグレイな印象があるかもしれませんが、一般産業界では多くのフリーランス(個人)が企業と契約し、労働対価を「報酬」として受け取っています。

医師の場合も同様に、税務署に「開業届け」を提出し、「青色申告」事業者として届け出れば、同じ仕組みを活用できます(できるはず)。

「それに何のメリットが??」という人は多いと思うのでざっくりと説明します。

端的に言うと、メリットは「経費」です。
旅費交通費(車の経費なども)、出張宿泊費、会議費、交際費(飲食費)、新聞図書費(書籍代)などなど、医業(勤務医と全く同じ働き方をしていたとしても)や関連事業に関わる出費を経費として収入から差し引く(控除する)事が出来るのです。

その結果、課税所得が圧縮され、同じ金額(収入)を得ていても勤務医より納める税額が少なくなるという事が起こります。
分かりやすくする為に敢えて「手取り」や「可処分所得」と表現しますが、手元に残るお金が実質的に大きく増えるという訳です。

但し、この恩恵に預かれるようにする為には、上述した税務署への「開業届け」、「青色申告」といった正規の手続きを経る必要があります。
(手続き自体は全く難しいものではありません。)

税務署の担当者によりどこまで経費として認められるかはケースバイケースでしょうし、フリーランス医師として働くという事は誰にとっても現実的という訳では無いかもしれませんが、開業準備中の医師などには一考に値する手段かと思います。

例えば、メンタルヘルスの不調を訴える人が珍しくない昨今、相応の需要が見込め、開業時の設備投資があまり高額ではないと言われる「精神科」、「心療内科」などは「メンタルクリニック」の看板を掲げ、家賃の安い裏通り、ビルの上階などに低コストで開業する事例が多いでしょう。

また、「眼科」、「皮膚科」といった女性医師比率が高い診療科も事前の診療圏調査、マーケットリサーチを入念に行えば、開業を軌道に乗せるチャンスはまだあるのかもしれません。

逆にこれら「精神科」、「心療内科」、「眼科」、「皮膚科」といった診療科目は、条件が良い定期非常勤の案件が、いつでも手に入るという訳ではありませんので、好条件の安定的な定期非常勤の仕事を確保するのに苦労するかもしれません。

まとめ:フリーランス医師は増加傾向。しかし、デメリットも多い。メリットとデメリットをしっかりと見極め、自分のライフプランとキャリアプランを描くべき。

医師の働き方は多様化しています。非常勤医師の求人は恒常的にありますが、あくまでも医療機関にとっては常勤医師が主たる存在で、非常勤医師の身分は不安定です。非常勤医師として働く事をメインにしようと考えている医師は、表面上の求人条件や短期的な視点のみで短絡的に動くのはリスクが伴います。短期的に見れば好条件の非常勤医師求人はありますが、自分のキャリアプランのみならず、自分と家族のライフプランも長期的に熟考した上で、働き方を選択する必要があるかと思います。
ご相談希望の医師はお気軽にご連絡ください。
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三木正孝

・プロフィール

医師の転職支援サービス「医師転職コンシェルジュ」を運営し、自らもエージェントとして医師の転職をサポートしています。これまでに14年間、多くの医師の転職を成功に導きました。

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・経歴

1969年大阪生まれ
大阪明星学園・明星高等学校卒業(高校3年時・剣道3段、玉竜旗全国高等学校剣道大会出場)
関西大学 法学部法律学科卒業(専攻・民法総則=高森ゼミ第14期幹事、大学4年時・剣道4段)

1992年
総合商社 ニチメン(現・双日株式会社)入社。商社マンとして11年間(1992-2003年)勤務

2003年
NZ・Hawaii短期留学・ビジネス視察

2004年
株式会社レイ・クルーズ設立、代表取締役に就任。
大前研一塾長ABS(アタッカーズビジネススクール)第19期
~現在に至る。