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【医師の転職】病院勤務医から社医や産業医に転職するには?

【医師の転職】病院勤務の医師から社医に転職するには?

激務と言われる病院勤務医から、ゆったりと働けるイメージがある「社医」や「産業医」に転職を考えた事はありますか?

「社医」とは、保険会社(例えば、日本生命や第一生命、住友生命など・・・)の社員として、或いは保険会社からの委託(委嘱)によって働く医師の呼称で臨床医とは働き方が大きく異なります。社医の仕事は、生命保険の契約時に、被保険者の健康状態を診断したり生命保険のリスク測定(診査)や、医学的リスクの大きさを判断する(引受査定)業務、そして公平かつ適正に保険金・給付金を支払う(支払査定)業務において、医学の専門家としての役割を担う事がメインの業務となっています。保険会社によっては査定医や審査医と呼ばれる事もあります。そして、社医の身分は保険会社に所属する医師であり、社員契約や嘱託契約、また稀に「準社医」といった非常勤契約などの雇用形態、契約形態があるようですが、常勤の場合は副業禁止(外勤アルバイト不可)となるケースが多いようです。

社医の他にも医療機関以外の企業で働く医師の仕事としては「専属産業医」や「嘱託産業医」などがありますが、業務内容や医師の雇用形態によりそれぞれ違いがあります。各々どのような勤務内容なのか、そして年収はおよそどのくらいなのかを、わかりやすく説明していきます。臨床医にとってはあまり馴染みのない「社医」や「産業医」について興味を持つきっかけとして、将来の転職の際の選択肢のひとつとしてお役立てください。

社医になるメリットとは

社医のメリットとは

社医は勤務時間が規則正しく安定しています。勤務時間は、大体9~17時が一般的です。医療機関で働く医師と違い、当直やオンコールはありません。そして、「週休二日制」で「有給も取得しやすい」などのメリットがあります。

さらに、訴訟リスクはほとんど無く、育児や介護と仕事の両立がしやすいなどのメリットもあります。つまり、ワークライフバランスを取りやすい環境となっています。また、生命保険会社は大手企業の中でも住宅手当や各種補助など福利厚生が手厚く、子育て支援など特に女性社員が多い事もあり働きやすい環境が整備されている点も特長です。

社医の業務内容

社医の業務内容

社医の業務内容は、生命保険会社の業務として、生命保険契約時に、被保険者の健康状態を診断する事がまず挙げられます。生命保険会社は、加入希望者の健康状態を確認した上で、契約(保険契約の引き受け)や保険金支払いの可否判断を行います。社医が主に行う業務内容としては、保健加入希望者に対して、3つの医的審査を行います。

3つの医的審査のうち、まず1つ目が生命保険加入者の審査、2つ目が引き受け審査、そして3つ目が保険金の支払い審査です。

次に、3つの業務内容の詳細を説明します。

3つの医的審査

1つ目の審査とは、加入希望者に対して、視診や触診、血圧測定、検尿、そして問診などで持病の有無や健康状態を確認する業務です。臨床医にも身近な健康診断と同様の内容とかんがえていただければ良いかと思います。実務的には、生命保険会社が用意している診査報状に沿って、決められた項目にて医的審査を行います。審査項目(血液検査、血圧測定、尿検査など)、加入希望者の保障金額(保険金額)の大きさによって変化します。

次に2つ目の引き受け審査とは、加入希望者が生命保険会社に提出するために個人で受診した人間ドックなどの検査結果書の書類を元に、加入希望者の生命保険を引き受けるのが適切かどうかを判断する業務です。

最後に3つ目の支払い審査とは、生命保険の場合は、保険加入者が亡くなった際の死亡保険金請求用診断書の査定を行う業務を指します。そして医療保険や、がん保険の場合は、入院・手術等の医療機関から発行される書類の審査を行います。査定をした上で。保険金額の確定や、保険金支払いの妥当性などを評価します。その後に査定業務の担当者にアドバイスを行う事などまでが主な業務内容となっているようです。

社医の適性とやりがい

社医の適性とやりがい

社医として働く際に求められる経験はとして必須なのは臨床経験です。応募要件として臨床経験年数を最低2~3年以上(実際には最低5年以上くらいを目安)としている企業は多いようです。臨床経験を求める理由としては、契約者の疾患について幅広く把握する必要があり、医学的見地・臨床的見地から保険引き受けや保険金支払いの妥当性を迅速に判断する能力が求められるためです。

そのため、基礎的な医学的知識は最低限備えている事が社医として採用される為の必要条件となっているようです。社医は保険会社の営業担当者と一緒に、最初に保険加入希望者と顔合わせをするため、保険会社にとっては会社の顔ともなる存在でもあります。そのため、高いコミュニケーション能力や、清潔な服装、礼儀正しい挨拶など、社会人として一般に求められるような立ち居振る舞い、第一印象が良い事なども有利に作用します。

産業医とは

産業医とは

次に、「産業医」について見ていきましょう。産業医とは、企業などにおいて、労働者が健康で快適な作業環境のもとで仕事が行えるように、専門的な立場から健康管理や労働衛生について指導・助言などを行う医師を指します。常時50人以上の労働者を使用する企業では、産業医を選任して、労働者の健康管理などに努める義務が労働安全衛生法で定められています。

産業医に求められている事の筆頭格は、社医と同じく、良好なコミュニケーション能力です。従業員の心身の不調を的確にヒアリングする能力と、メンタルヘルスケアの状態を把握する能力などが必要になります。主な業務は、従業員の健康管理や社内の労働衛生環境の整備などのため、治療を行う訳ではなくその為、医療スキルが求められるという訳ではありません。そして医師免許とは別に「産業医資格」が必須となっています。

社医と産業医の違い

社医と産業医の違い

社医と産業医は、診断する対象が異なります。「社医」の場合は、生命保険会社の社員として(或いは委託・委嘱を受け)生命保険契約をする際に、保険加入希望者の健康状態を診断する業務であるのに対し、「産業医」は、企業の労働者の健康管理や労働衛生環境の整備を行います。ざっくりしたイメージでは、社医は保険会社勤務、産業医は一般企業勤務(主に大手製造業=工場で多数の労働者を抱えている、など)という分類で大きな間違いは無いかと思います。

雇用契約の違いという観点では、社医と産業医の大きな違いは、社医は生命保険会社の正社員(特定業務に特化した社員)のケースが多いですが、産業医は企業などの労働者の健康管理、労働衛生環境整備計画などを行う医師であり、雇用契約は「業務委託契約」だったり、「専属産業医契約(≒常勤、週3.5~4日など)」、或いは「嘱託産業医契約(≒非常勤、月に1回など)」など、企業により様々です。
「社医」、「専属産業医」は一般会社員に近い身分と働き方になり、「嘱託産業医」は臨床医や開業医がアルバイトとして担っているケースが多いようです。

社医として勤務する際には、週5日勤務が基本となります。産業医は企業規模によって、専属産業医と嘱託産業医の主に二通りの雇用形態があります。専属産業医と嘱託産業医の違いについて、わかりやすく説明します。

嘱託医とは

嘱託医とは

嘱託医は、嘱託という言葉が示す通り、非常勤勤務です。正規の常勤医とは別の労働形態で働いている医師です。嘱託医というのは一般的な呼称であり、統一された定義は無いようです。

嘱託医とは、行政機関や医療機関、介護施設などから委託を受けて診療や治療をする医師を指します。生命保険に加入する場合に診断する医師は、生命保険会社に委託(委嘱)されて診療・治療を行う医師の事で上で述べた社医も正社員としての雇用契約でない場合は嘱託医という分類での契約になる場合もあるかもしれません。

嘱託医のほとんどは、開業医や勤務医が本業の日常診療を行いつつ、研究日や外来の無い時間にアルバイトで業務を担うケースが多いようです。

専属医とは

専属医とは

専属産業医は企業と契約し、基本的には契約した事業場に所属し、その事業場の労働者のために、専門的な見地から労働衛生環境の整備や労働者の健康管理を業務として行います。専属産業医も嘱託産業医も同じ産業医のため、業務内容が大きく変わることはありませんが、専属産業医の方がより社内における労働衛生環境の整備などでリーダーシップを取る事を求められると言えるでしょう(病院において常勤医が非常勤医よりも責任ある仕事を任せられるのと同様です)。

近年では、精神科医と連携し、メンタルヘルスケアにも当たる事を求められてきています。また、有害業務に従事している労働者の一定の人数が500人以上になる事業場と、常時1,000人以上の労働者を使用する事業場(大手メーカーの工場などをイメージしてください)では、専属産業医を置く事が必須となっています。

もし事業場に3,000人を超える労働者がいる場合は、2人以上の産業医を選任する必要があり、そのうちの1人は専属産業医である事が必須となっています。さらに有害業務に常時500人以上の労働者を使用する事業場も同様に、1人は専属産業医にする必要があります。

社医の年収

社医の年収

社医の年収を明らかにしている保険会社は少ないですが、週5日勤務の正社員だとして、おおよその平均年収は、1,200~1,400万円あたりが相場となっているようです。

この年収相場は、医療機関で働く医師と比べると、決して高い金額ではありません。更に、勤務時間やキャリアによっては1,000万円以下になる事もあります。会社によって、退職金制度や昇格・昇給なども違ってきます。医師免許を持つ「会社員」となる為、臨床医よりも年収は低くなる事がデメリットと言えるかもしれませんが、福利厚生の充実や規則正しい生活環境を手に入れやすい点などはメリットと言えるでしょう。

社医として、長期勤続・安心して働く事ができる雇用環境を手に入れたいを考えているのであれば、年収以外の部分に目を向けた方が良いでしょう。ただし、今の時代、大手企業勤務と言っても、経営状態や経済環境によっては、給与カットになる場合や、会社の合併、辞職勧告などされる可能性もあり、「パラダイス」は無いと考えておいていただきたいと思います。

社医の求人

社医の求人

社医や産業医の需要が高い一方で、一般の求人誌や求人サイトにはあまり社医や産業医の求人は掲載されていません。医師専用の転職サイトに一部情報が掲載されている程度か非公開案件が殆どとなっています。

そのため、社医や産業医の求人を探す場合は、医師専門の転職サイトに登録すると時間を効率的に使うことができます。好条件の医師求人は、非公開求人として一般には公開されていないことが多くあります。

医師に特化した転職サイトの担当者が希望に合った転職先候補を探してきてくれるメリットもあります。転職サイトを上手に利用して医師が働きやすい会社選びを行うとスムーズです。

まとめ

以上、勤務医から社医や産業医に転職する際に参考になるよう、主な業務内容や年収などについて説明しました。社医や産業医として働く場合のメリットや、専属産業医や嘱託産業医など、それぞれの違いについて理解した上で、転職活動に役立ててください。

社医や産業医への転職を考えている医師は、今後のライフプラン設計を含めて検討してみてはいかがでしょうか。

次の記事では、医師のライフプラン設計に役立つように、キャリアアップ転職に関する内容と、医師の定年に関する内容をまとめています。

次の記事もぜいチェックしてみてください。

【将来を考える医師の転職】医師免許を活かせる他の仕事の可能性

【65歳以上の医師求人】定年後も働きたい65歳以上の医師の方へ

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三木正孝

・プロフィール

医師の転職支援サービス「医師転職コンシェルジュ」を運営し、自らもエージェントとして医師の転職をサポートしています。これまでに14年間、多くの医師の転職を成功に導きました。

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・経歴

1969年大阪生まれ
大阪明星学園・明星高等学校卒業(高校3年時・剣道3段、玉竜旗全国高等学校剣道大会出場)
関西大学 法学部法律学科卒業(専攻・民法総則=高森ゼミ第14期幹事、大学4年時・剣道4段)

1992年
総合商社 ニチメン(現・双日株式会社)入社。商社マンとして11年間(1992-2003年)勤務

2003年
NZ・Hawaii短期留学・ビジネス視察

2004年
株式会社レイ・クルーズ設立、代表取締役に就任。
大前研一塾長ABS(アタッカーズビジネススクール)第19期
~現在に至る。