- 転職
- 2018-5-31
医師転職市場や厚労省の医師調査から見る医師の離職や転職率とは?
医師の転職が一般化する一方、医師の離職や休業も増えています。女性医師の増加や医局に属さない若手医師が以前よりも増えている事などの要因が指摘されています。 男女を問わず、子供や家族と過ごす時間を大切にしたいという医師も増えています。医師の勤務実態や医師が望む働き方の意向から見えてくる医師の転職率や離職率の実態はどうなっているのでしょうか?
勤務医の勤務実態と働き方意向から見えてくるものとは?
「医師の勤務実態及び働き方の意向等に関する調査」が厚生労働省により昨年(平成29年春)公表されました。
調査対象
- 全国の医療施設に勤務する医師(病床規模等により層化、無作為抽出した医療施設に勤務する医師)が対象
- 調査対象数は全国の医師約10万人(回収数は15,667人)と、初めての大規模全国調査
この調査では下記項目について重点的に確認が行われました。
① 出身地・出身医学部所在地・家族構成・収入等を含む、医師の属性に関する項目
② 医師の勤務実態を詳細に把握するためのタイムスタディに関する項目
③ 他職種との役割分担やキャリア意識等の将来の働き方に関する項目
④ 将来の勤務地に関する意向等の医師偏在対策に関する項目
この調査によると男性医師の勤務実態は、結婚して子供が生まれた場合でも、「子育て前」とあまり変化は無い一方で、女性医師の勤務実態を見ると「勤務内容軽減」が最も多く、「休職・離職」の割合が男性医師と比較すると突出して多くなっています。
限られた人数からの調査データではありますが、女性医師が結婚して出産をすると医師としての仕事と育児、家事の両立は相当大変で、休職・離職を余儀なくされる医師の事例が多い事が見えてきます。
昨今「医師の離職率が上昇」といった話題を耳にする事がありますが、この「離職率」というコトバ、かなり曖昧な表現です。離職率とは「一定期間を定め、その期間内にどれだけの人が離職したかを数値化」したものですが、一定期間は任意で設定する事ができます。
医師の転職で具体的に見ていくと、
例えば「新しく入職した医師が入職後3年以内に離職した割合」と定義して離職率を語る場合、
- ある民間病院で、10名の常勤医師を採用。3年以内に5名が退職した場合は、5名÷10名=3年以内の離職率は50%
という事になります。1年以内ならどうなのかとか、明確に離職率を把握している病院はあまり無いかもしれません。しかし、医師が転職を検討する場合、候補先の病院が医師にとって働きやすい、居心地が良い病院かどうかを測るひとつの目安として、医師の定着率が良いのか否か、医師の平均勤続年数は何年くらいなのか、医師の入れ替わりは激しいのか、医師の退職理由はどういったものかなどは確認すべきでしょうね。
少し話がそれましたが、上記の調査結果によると、女性医師は、「時間短縮勤務」「勤務日数減」「業務内容軽減」を希望する割合が多く、また、常勤医師の約10%、非常勤医師の約25%が「休職・離職」を経験しているという結果も出てきています。まだまだ一般的ではないかもしれませんが、時短や当直無しなど柔軟に相談できる病院は徐々に増えてきています。医師にとって働きやすい環境を整備しない病院には医師は定着してくれません。医師転職コンシェルジュとしても評判が芳しくない病院には医師を紹介できません。
医師の転職率は?
医師の転職率が上昇といった記述もインターネットなどで時折目にする機会があります。しかし、こちらのコトバも正式な調査を基にしたものではない場合が多いようです。そもそも「転職率」とは何でしょうか?
独立行政法人労働政策研究・研修機構の「ユースフル労働統計」によると、
「労働者に占める転職者の割合を転職率と呼ぶ。転職率が高ければ転職が頻繁であり、労働の流動化が進んでいると言える。転職率は、性別や年齢、就業形態、さらに産業や職業によって異なると思われる。」とあります。
医師の場合、所属する大学医局の人事による異動が圧倒的多数だった時代と比べると、自ら転職をする医師が増えている為、医師の転職率が昔よりも上昇しているのは事実と言えるでしょう。
大学医局を辞めて転職しても成功する医師の傾向とは?
若年層の医師は概ねどんな病院でも歓迎される為、大学医局を辞めても比較的容易に転職する事が可能です。しかし、40代後半~50歳代になると医師の転職は簡単なようで簡単ではなくなってきます。その理由は役職ポスト(ポジション)や診療科に在籍している医師の年齢構成上の制約です。
高い年俸(年収)と譲れないポストの要求、それに症例や業務内容など多くの条件が複合的に絡み合うと、候補案件は一気に限定的となります。日本中を探してもこれら全ての希望に合致する医師求人案件にタイミングよく出会うというのは大変困難になります。
大学医局の影響を受けない、医局支配下に無い病院となると自ずと希望条件に優先順位を設ける必要が出てきます。ある種の「戦略的妥協」です。これができる医師は大学医局を離れてもうまくいく事が多い印象です。
家族や子供と過ごす時間を大切にしたいという医師であれば、年次有給休暇が取得しやすい病院だとか、当直無しの病院だとか、でもその分、年俸は少し我慢しようとか、大学病院や医局関連の中核病院のように最先端の高度医療の症例が集まる訳ではないけどそこは割り切って思考を切り替えようといったマインドセットの転換ができる医師には病院側から好条件のオファーが届く事もあります。
「時短勤務」、「週4日常勤」、「当直無し」・・・、具体的な希望をお知らせください。医師の様々な働き方を応援します。
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【将来を考える医師の転職】医師免許を活かせる他の仕事の可能性
・プロフィール
医師の転職支援サービス「医師転職コンシェルジュ」を運営し、自らもエージェントとして医師の転職をサポートしています。これまでに14年間、多くの医師の転職を成功に導きました。
経歴を見る
・経歴
1969年大阪生まれ
大阪明星学園・明星高等学校卒業(高校3年時・剣道3段、玉竜旗全国高等学校剣道大会出場)
関西大学 法学部法律学科卒業(専攻・民法総則=高森ゼミ第14期幹事、大学4年時・剣道4段)
1992年
総合商社 ニチメン(現・双日株式会社)入社。商社マンとして11年間(1992-2003年)勤務
2003年
NZ・Hawaii短期留学・ビジネス視察
2004年
株式会社レイ・クルーズ設立、代表取締役に就任。
大前研一塾長ABS(アタッカーズビジネススクール)第19期
~現在に至る。
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